資格を取ると貧乏になります

実際に資格を持って働いている自分にとってはショッキングなタイトルだったので、

ついつい手にとって読んでしまった。

「資格を取ると貧乏になります」(佐藤留美)


内容は主に、弁護士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、TOEICの現状を述べているが、

どうも最後のTOEICだけが唐突すぎて浮いているような気もする。

資格試験と資格取得後の実態を明らかにするというコンセプトの本だから、

外れてはいないもののこれだけ士業をあげたのだから、

司法書士とか行政書士なども取り上げてほしかった。

とりあえず、

税理士なので税理士業界について書かれた章が気になったのでそこから読んでみた。

爺ちゃんの茶坊主になれ

本書では、よいお客様を顧問先から持っている

高齢の税理士先生(本書でいう、爺ちゃん税理士)とお近づきとなって、

そこから仕事を取ることができ、

うまくいけば廃業するときにごっそり顧問先を引き継ぐことができると

夢のようなことがと書かれている

果たして、どうだろうか。

先輩の税理士と交流を深めることはよいことだが、

本当にそこから仕事をもらうことができるだろうか、甚だ疑問である。

本書において散々顧問料が低下、記帳代行が会計ソフトにとって変えられる、

事業者数が年々減少などと税理士の取り巻く環境が厳しくなっていることが

ガンガン書かれている。

爺ちゃん税理士といっても、

一人で業務を行っている先生ばかりではなく従業員を雇っている場合もあるし、

年金も少ない場合もあるだろうことから、

厳しい状況下の中で収入源をそう易々と同業者に譲ってしまうだろうか。

また、ベテラン税理士が廃業するときに顧問先を譲られるとあるが、

その顧問先が「ハイ、そうですか」などと言って

すんなり紹介された税理士に依頼してくれるか定かではない。

昔のように税理士の数が少なく、顧問料が法律で決められており、

広告宣伝が規制されていた時代ならいざしらず、

税理士の数は多い、報酬額は自由に決められる、

広告自由な現在では、

顧問先はインターネットで選び放題であるのだ。

ネガティブなことばかり書いてしまったが、

茶坊主作戦は

戦略の一つと考えるならばありといえばありなのだろう。

まったくない話でもないわけだし。

恐怖、ひよこ喰い

どうしようもないセミナーで

新人の社会保険労務士を食い物にするという話(通称、ひよこ喰い)も書かれていたが、

税理士の業界でもこれに近いものはある。

自分の事務所を振り返ってみると、

とにかくセミナー関係の郵便物やFAXダイレクトメールが多い。

1日にだいたい1~2通は来る。

税制改正セミナー、

事業承継セミナー、

歯科医業税務セミナー、

士業マーケティングセミナー、

新規顧客獲得セミナーなどよく送られてくる。

この手の多くのものは新人の税理士に限らないものであり、

ベテランの税理士もターゲットとなっている。

最近は特に、税理士が自分のノウハウを他の税理士に売るというビジネスが活発になっている。

要するにこれは、税務申告の市場規模が小さくなっていることを如実に示している。

税務申告だけで潤えばわざわざ自分のノウハウを同業者に売るわけがないのだ。

自分がセミナーに行くかどうか判断するときのポイントとしては、

過度に不安を煽ったものは行かないとしている。

だいたい、「顧問先の流失を食い止める」とか、「低価格の報酬から脱却する」など、

どこの事務所も頭を悩ましていそうな大問題を

そんな2~3時間のセミナーでどうにかなるわけがない。

税理士になることに魅力はあるのか

 本書では、税理士を取り巻く環境は大変であり、儲からないということがこれでもかと書かれている。

 その業界の大変な環境を知ってか知らずか、現に税理士の受験者数は年々減少傾向にある。

 国税庁によれば、受験者数の推移は以下のとおりである。

平成22年 51,468人
平成23年 49,510人
平成24年 48,123人
平成25年 45,337人
平成26年 41,031人
平成27年 38,175人
平成28年 35,589人
平成29年 32,974人
平成30年 30,850人

 毎年減少傾向にあるが、平成24年から、毎年約3,000人の受験生が減少している。

 税理士業界、税理士会などは税理士試験のこの受験者数が

減少していることに懸念を示しており、

税理士の魅力を紹介したパンフレットなどを作成してアピールしている。

 しかし、受験生は減っているものの税理士になる人の数は年々増えている。

 以下の表は、国税庁のホームページに掲載されている年ごとの税理士登録者数である。

会計年度 登録者数
昭和35(1960)年度 10,888
昭和40(1965)年度 15,827
昭和45(1970)年度 24,024
昭和50(1975)年度 32,436
昭和55(1980)年度 40,535
昭和60(1985)年度 47,342
平成2(1990)年度 57,073
平成7(1995)年度 62,550
平成12(2000)年度 65,144
平成17(2005)年度 69,243
平成22(2010)年度 72,039
平成25(2013)年度 74,501
平成26(2014)年度 75,146
平成27(2015)年度 75,643
平成28(2016)年度 76,493
平成29(2017)年度 77,327

 おそらく、これは国税庁を23年以上勤務した人や公認会計士のように

税理士試験を受けることなく税理士登録ができるという制度があるため、

これにより毎年一定数増加をしているのはないかと考えられる。

受験生が年々大幅に減っているということは、

世の人たちは税理士試験を受験して税理士になっても

割が合わないと思われているのではないだろうか。

 たしかに大変な思いをして勉強して試験に合格したとしても、

高収入が約束されていなければやるだけ無駄と思うのも無理からぬ話ではある。

ひとこと本音

○○の業界は斜陽だとか、今は○○業が儲かるなどといっても、

その業界にいる人のすべてが儲かっていたり、儲かっていなかったりするわけでもない。

業種ごとの波はあるとは思うが、

結局のところ本人の営業力と商品力にかかっているのではないだろうか。

それは士業も当然のことながら例外ではないのだろう。

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